百頭たけし 個展
「と-れん」


 

会期

2023年10月21日(土)〜11月19日(日) 12:00〜19:00 土日祝のみ
(10月21、22、28、29日、11月3、4、5、11、12、18、19日)




入場料:500円(お茶付き)


展覧会紹介


Token Art Centerでは、2023年10月21日より百頭たけし 個展 「と-れん」を開催します。
百頭は2007年頃より写真作品の制作を始めました。百頭の制作プロセスは、グーグルマップの航空写真モードで主に関東の郊外などを眺め、気になる地点をズームアップ、ストリートビュー画像などから期待する場所が見つかればピンを打ち、その後現地を訪れカメラで切り取っていくというもので、ネットと現実、地図と現実の土地など、百頭の制作は二つの世界に跨り行われていると言えます。制作初期においては、東京や神奈川の都市部で人物や風景のスナップなどを撮影していましたが、理性によって支配された都市の厳格な秩序の中にはない景色を求め、都市の周縁、そして郊外へとフィールドを移していきました。郊外の中でも百頭が「ジャンクヤード」と呼ぶ場所には、特に産業廃棄物処理業者や土木建設業者が多く存在していることから、自動車や自転車、家電や家具などのスクラップ、鉄屑やコンクリート殻など、さまざま廃棄物が大量に集積されています。建物過密な都市においては新築と解体はセットで行われ、その解体によって発生した産廃は郊外へと排出されます。都市の廃棄物が郊外を形成し、風景の新陳代謝はいつも都市と郊外の両輪で駆動する。だから郊外は都市の裏側あるいは都市の異なる形態ということができるかもしれません。さらにそこでの、さまざまな人々の意識と無意識、必然と偶然、人工と自然、美と醜がない混ぜになり、ジャンクヤードのどこか得体の知れない風景が形作られていきます。これらの風景を執拗に時間をかけて調査し、時には同じ場所を幾度も訪れ切り取る百頭の写真には、都市とは異なる郊外の、狂気と可笑しみの秩序が映し出されています。
今回の個展「と-れん」では、ホルヘ・ルイス・ボルヘスの二つの短編が下敷きになっています。一つは「トレーン、ウクバール、オルビス・テルティウス」。百科事典の中にのみ存在していたトレーンという観念世界が、次第に実体を伴って現実世界を侵入し、ついには置き換わっていきます。また物語中、フレニールという複製物質が登場します。そしてもう一つは「学問の厳密さについて」。ある帝国が地図制作の技術を極めて、ついには1/1の実寸大地図を作り上げてしまうという話。いずれももう一つの世界の現実世界への侵入、そして複製を重要な要素として読むことができます。
「トレーン、ウクバール、オルビス・テルティウス」においては、現実とトレーンの境界として百科事典があったように、本展においては写真が異なる二つの世界の境界となるのでしょうか。本展は百頭にとっては6年ぶりの個展となります。
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2020年以降に撮影した近作をメインに組みました。コロナ禍の状況は社会の在り様を大きく変えはしましたが、私がフィールドにしている郊外ではほとんど写真に現れていないなというのが実感です。誤解を恐れず言うなら、あの状況は都市生活者の欺瞞だったのかもしれない。これは撮れなかった。逆にウクライナ戦争とその後の世界経済の混乱はさまざまな原料高を引き起こし、郊外の金属ヤードから廃材の山を簡単に消し去りました。
百頭たけし
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イベント情報

10月21日(土) 17:00〜19:00 オープニングパーティ



作家紹介

百頭たけし Takeshi Hyakutou

1980年群馬県生まれ 

主な個展
2017年「カイポンする/我蓋朋」コ本や(東京)
2016年「D現場」TAP Gallery(東京)
2015年「Busy, busy, busy」TAP Gallery(東京)
主な企画展
2022年「Almost heaven; too far and too grand」コートヤードHIROO(東京)
2018年「VOCA展2018」上野の森美術館(東京)
2017年「不純物と免疫」トーキョーアーツアンドスペース本郷(東京)



無題 2021年 ピグメントプリント


無題 2020年 ピグメントプリント


無題 2019年 ピグメントプリント


歩み去る 2020年 映像


無題 2017年 インクジェットプリント 撮影:Gen Shimizu